ピエール・ルメートル『その女アレックス』

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)



 普段は古い本ばかり読んでいるのであまり書くこともなく、研究用の書架にほうりこんでそのままという日々を過ごすと、新刊本などなかなか手に取ることもない。しかし周りで現代の本を読んでいる読書家などが新しい友人ができたりすると、その旺盛な読書欲を目にして、自分にもかつてあった「新しい本を読みたい」という欲求がふつふつと出てきたので、仕事帰りに本屋によって、入り口に平積みしてあったこの本の表紙に惹かれて(他意はない)買って帰った。結論から言うと買ってよかったし、好きな作家になった。

 読み終わった後、ミステリらしくなく多様な感情をいだかせる作品構成に感嘆した。多分作者は文学的素養もきっちりあるんだろうと推察する。もちろん、ミステリというジャンルにつきものの構造主義的にテクニカルな部分もしっかり詰め込まれているので、ミステリとしても純粋に非常にレベルが高い。