40を目前に

 数週間前に38歳になった。立派な中年だ。でも全体から見ればまだ若いほうなんだろう。今までの人生、ずいぶん脱線が多かったような気がするが、それでも私の職場を見回すと私はまだ若手の部類で、あまり年下はいない。私の趣味のカメラも、私より若い人で私よりがっつり撮ってるという人はあまりいない。まあ、大学に比べるとカメラの方はそうでもないのだけど、でもそこそこの購買力が必要な趣味だから、年齢層は比較的高めだ。私の周りは、だから私より年上、一回り二回り年上の人が多い。そういう人を見ながら、自分が遠くない未来になるであろう老年をどう迎えるか考える。考えながら、若くはありたくないなあと思うようになった。「少年のような純粋さ」が肯定的な表現としてある一定の市民権を得ているこの国においては、望ましく年を取るというのは難しいタスクであるように思われる。50代、60代になったときに、その年齢に相応しい疲れと絶望を抱えられる背骨を鍛えておきたい。それから目をそらさないで、それを肩に背負って、少しだけ腰がまがる程度で、なんとか毎日を生き抜くような脚力を作りたい。70歳になって少しずつそれらを失った後、今度は自分自身を失うという時に、その脚力は活きてくるだろう。これは、個人の戦いだ。誰とも共有できず、誰にも「いいね」がもらえない、そんな戦い。